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そのむかし、赤レンガ通りと呼ばれた界隈には家具店のほか、建具屋や大工道具を扱う店などがひしめいていました。田中栄八商店は、明治3年の創業以来、この赤レンガ通りで籐製家具の商いを続ける老舗です。
「籐製家具といえば、むかしは裕福なご家庭で愛用されていました。それは、技巧が優れた優雅な家具であり、希少な高級品だったからです。籐の椅子や敷物は圧倒的な人気を誇っていました」と語るのは四代目の田中光男さん。
それが、小物入れやダストボックスなどにも籐製品が現われ、籐家具が普及しはじめたのは、バブル期といわれた昭和の終わりから平成のはじめにかけてからだといいます。
「東南アジアなどからの輸入品が出回ったことで価格が安くなり、だれもが手に入れやすくなりました。とはいえ、輸入物は日本の職人が手づくりでつくるものと比べると、華奢なものが少なくないのも事実。物持ちが違うと思います」
籐家具の特長は、軽くて丈夫、形も自由自在に加工できること、そして手入れが簡単にできることです。
「一番の魅力は、手に触れたときに自然となじんでくること。それから長年使い込むことによって独特の風合いが出てきます。これが愛着を生むんですね。何年もお客様にお使いいただき、メンテナンスで戻ってくる椅子もありますよ。大切に使ってくれていたのがわかり、職人冥利につきますね」
自分だけのオリジナルの椅子を、とスケッチを持って製作を依頼されることも多いといいます。
「息子がホームページを開設してくれて、うちの仕事を知る人が増えたようなんです。北海道や沖縄などから注文もあり、全国規模でお客様が広がりました。これには、こちらも驚きでしたね。確実に新しい籐家具ファンが増えていると実感しています」時代は、確実に本物志向になりつつあるようです。
反面、田中さんが危惧するのは、天然素材である質のいい籐の不足と確かな技能を身につけた職人の高齢化です。「しかし、『いいものはいい』といってくださるお客様がいる限り頑張っていきますよ」田中さんの笑顔は輝いていました。
●田中栄八商店のアドレス http://rattana8.hp.infoseek.co.jp/
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