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白金台の閑静な住宅街に、江戸表具の伝統を守る尚雅堂があります。二代目の鈴木正一さんは、戦後間もなく表具の修行を始めた、この道50年以上の大ベテランです。
「本当は、表具の仕事は好きではなかったんです。しかし、親父の仕事を見て育ちましたし、気がついたらこの世界で仕事をしていた感じです。私は親父のもとでずっと修行してきましたけれど、息子の私がいうのも気恥ずかしいですが、親父はいい腕をしていたと思いますね」という鈴木さん。「むかしから受け継がれてきた伝統工芸には、細かいところまで気をつけて仕事をしていて、職人の気遣いが感じられるところが一番の魅力」とも。
しかし、最近は住宅事情が変化して、鈴木さんのような伝統工芸の職人さんの腕の見せ所が減ってきているといいます。「最近だと、アパートなんかでも畳の部屋じゃ借り手がいないんだってね。日本人が育ててきた素晴しい文化を、今の日本人が閉ざそうとしている気がして残念だねえ」と寂しそう。
「長い伝統に息づいてきた技術は、美しさとともに機能性を持ったものをつくる工夫が備えられているんですよ。表具は、永久に残すためにさまざまな工夫が随所に込められているんです。汚れたら修復して、もとのきれいな状態に復元して、また飾る。そうしたいい習慣が日本にはあったんだよね」と鈴木さん。
むしろ、日本の文化には、外国人の方が興味を示していると感じるそうです。
「茶道の先生が、チェコのプラハで本格的な日本の茶道をPRするっていうんで、その建物のお手伝いをしてきたんですよ。そうしたら、日本家屋が新鮮ということもあるんでしょうが、初めて見る畳や障子、襖なんかをすごく熱心に観察しているんですよ。あちらの高校生なんか、『手伝わせてくれ』って、私のそばを離れないの」鈴木さんはうれしそうに笑います。
「やはり、こちらのつくったものが評価されるのは、職人にとって一番うれしいことですよ。まあ、外国で評価されるというのも複雑な気持ちではありますけれど」と、とまどわれながらも笑顔が続きます。洋の東西を越えて、鈴木さんの技術は輝き続けています。
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